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高IgD症候群(HIDS/MKD)

 

高IgD症候群とは

高IgD症候群(HIDS)は、メバロン酸キナーゼ(MVK)遺伝子の異常が原因と考えられる自己炎症疾患で、別名をメバロン酸キナーゼ欠乏症と呼びます。日本では、病名が示すような血液中のIgDが高値となる例は少ないと考えられています。多くは乳児期に発症し、常染色体劣性遺伝を示し、日本には10~20名程度の患者さんがいると推測されています。なお最近では高IgD症候群(HIDS)ではなく、メバロン酸キナーゼ欠損症(MKD)と呼ばれており日本でも名称を改める動きがあります。
   

原因

コレステロール生合成に関わる酵素であるメバロン酸キナーゼをコードするMVK遺伝子の異常が原因です。メバロン酸の代謝産物であるゲラニルゲラニルピロリン酸が短期的に不足し、炎症性サイトカインの一種であるIL-1βが過剰に分泌され、周期性発熱が起こります
  

症状

1:発熱 乳児期に発症し、発熱は4~6日持続します。

2:皮疹 発熱に伴って皮疹が認められます。

3:腹痛 患者さんの約80%に激しい腹痛がみられます。

4:関節症状 患者さんの約70%に関節痛や関節炎が認められ、一般的に関節破壊は認められません。

5:その他 頭痛・嘔吐・下痢・腹痛・リンパ節腫脹・肝脾腫・アフタ性口内炎を伴うことがあります。

 


  

診断と検査

1:一般的な血液検査
発熱発作時に、白血球数とCRPが著明に上昇します。血清IgDとIgAが年齢とともに上昇してくることが多いです。しかし、日本の症例の殆どはIgDは正常で、後述するメバロン酸キナーゼの活性によって診断・除外を行う必要があります。

2:発熱時の尿中メバロン酸測定
発熱発作時に尿中メバロン酸が高値を示します。メバロン酸は非常に不安定な物質で、検査は複数回行うのが望ましいとされています。

3:MVK遺伝子検査
メバロン酸キナーゼをコードする遺伝子を解析します。変異を全く認めない場合はHIDSは除外されます。変異を認めた場合は、Cのメバロン酸キナーゼの酵素活性を測定し、確定診断を行います。

4:メバロン酸キナーゼの酵素活性測定
HIDSの確定診断と除外診断を行う上で、最も確実な検査です。HIDSの重症例では酵素活性が1%未満に、軽症例では1~10%に低下しています。


  

治療

1:スタチン
HMG-CoA還元酵素の阻害薬で、コレステロール生合成を抑制し、高コレステロール血症の治療に用いられる薬です。HIDSの患者さんではコレステロール生合成に障害があり、スタチンを服用すると症状が悪化するのではと考えられるのですが、経験上、スタチンは一部の患者さんにスタチンが有効であることが分かっています。最近では、ゲラニルゲラニルピロリン酸の短期的不足に対して、ゲラニルゲラニオールを補充する治療が検討されています。

2:副腎皮質ステロイド
発熱発作が起こった時に、短期的に使用します。

3:イラリス
IL-1βを阻害する薬です。

4:エタネルセプト
TNFαとTNFβを阻害する薬です。

5:造血幹細胞移植
重症例で造血幹細胞移植が行うことがあります。


   

合併症と予後

 腹膜炎に続発する腹腔内癒着が10%程度、関節拘縮、アミロイドーシスも数%に見られます。重症例では精神発達遅滞や痙攣を合併する症例もあります。ヨーロッパの報告によると、患者さんの約50%に乳児期からの学習の遅れがみられ、20%程度が高等学校の卒業が出来ず、25%程度が成人後も職に就くことができず、社会的機能に障害を来たします。
   

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