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PFAPA症候群(周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎症候群)

 

PFAPA症候群とは

 PFAPA症候群は、周期性発熱、アフタ性口内炎、頸部リンパ節炎、咽頭炎を主症状とする疾患です。患者さんの多くは5歳以下の乳幼児期に発症し、日本での平均発症年齢は3.2才、成人発症は稀と言われてきましたが近年では成人で発症する症例や思春期を過ぎても自然寛解しない症例も見つかっています。周期性発熱症候群の中では最も患者数が多いと推測されていますが正確な疾患頻度はよくわかっていません。また遺伝性はないとされています。
   

原因

 原因遺伝子は解明されておらず、病気の原因は詳しくは分かっていませんが、Th1へシフトした免疫異常、すなわち、細胞性免疫が活性化することが示唆されています。また、発作時期に関わらず、IL-6、IFN-γ、TNF-α、IL-1β、IL-12p70などの炎症を引き起こすサイトカインが高値を示し、炎症を抑制するサイトカインであるIL-4は低値を示し、サイトカイン調節機能異常が原因であると考えられています。
  

症状

1:発熱発作 
 患者さんの全例に認められます。39〜40℃以上の発熱が突然出現し、平均5日間(3〜6日)続きます。発熱 の間隔は平均24日(3〜8週)で、月経周期の様な規則性がみられます。

2:アフタ性口内炎・口腔病変 
 患者さんの50〜70%に認められます。頬の粘膜や舌の表面に軽い痛みを伴う口内炎がたくさんできます。

3:頸部リンパ節炎 
 左右対称性で小指頭大〜母指頭大の非化膿性リンパ節炎が、薬70〜80%で認められます。50〜70%で圧 痛を伴います。

4:咽頭痛・咽頭炎 
 患者さんの60〜90%で認められ、発熱発作の1~2日前に症状が出現することが多いです。

5:扁桃炎 
 患者さんの50〜75%に認められます。反復性扁桃腺炎と診断され、扁桃摘出術を受けた小児の20〜  30%がPFAPAであったとの報告があります。

6:倦怠感
 発熱発作期には多くの場合で悪感、頭痛、食欲不振、生あくび、強い倦怠感が発生し、重篤感があります。
7:その他
 頭痛、関節痛、腹痛、嘔吐、下痢、咳、血尿、発疹など多彩な症状が現れます。呼吸器症状、眼病変、心 血管系病変、生殖器病変は一般的にPFAPAでは認められません(もしこれらの症状が出た時は他の自己炎 症疾患との識別が必要になります)
  

誤診されやすい疾患・類似疾患

 同じ自己炎症性疾患の「家族性地中海熱」との誤診がとても多いです。他に誤診されることが多い疾患にベーチェット病、病巣扁桃炎、感染症、周期性好中球減少症、全身型若年性突発性関節炎などがあります。口内炎は消化器症状と考えることができることから。近年ではベーチェット病の識別が必須となっています


  

診断と識別

 発熱発作時に、炎症を反映して、好中球有意の白血球増加、赤沈亢進、CRP上昇、血清アミロイド(SAA)上昇などがみられますが、これらの検査所見はPFAPAに特徴的なものではありません。また画像診断による診断もできません。症状からPFAPA症候群を疑い、さらに、周期性好中球減少症、反復性扁桃腺炎などの感染症、その他の自己炎症疾患、ベーチェット病などの病気と鑑別する必要があります。診断基準には1994年発表「Thomasの診断基準」が主に使われていますが、2005年に発表された「Paderの診断基準」はステロイドへの反応性を含めた臨床的な内容となっており、この2つを併用して除外診断と確定診断を行っていきます。

【 Thomasの診断基準 】
T:5歳までに発症する、周期的に繰り返す発熱

U:上気道炎症状を欠き次のうち少なくとも一つの炎症所見を有する
 a)アフタ性口内炎
 b)頸部リンパ節炎
 c)咽頭炎

V:周期性好中球減少症を除外できる

W:間欠期には全く症状を示さない

X:正常な成長、精神運動発達 

※「Thomasの診断基準(1994年発表)」に記載があるようにほとんどの場合5歳以下で発症するが、発症の平均年齢は3〜4歳で女児よりも男児にやや多くなっている(50〜60%)


   

検査

基本は「不明熱の一般精査」に準じますが、他疾患との識別に必要な検査も同時に行います。

1:十分な問診(発熱期間、随伴症状、家族歴、出生地等)

2:咽頭培養検査

3:血液検査
 a) 血算、白血球分画
 b) 生化学一般、赤沈
 c)CRP、血清アミロイドA
 d)免疫機能(IgG、A、M、D、CD4/8)
 e)補対価
 f)抗核抗体・各種自己抗体
 g) プロカルシトニン
 h)各種サイトカイン
 i)血清亜鉛

4:ウイルス検査(EBウイルス、アデノウイルス)

5:検尿・検便

6:各種画像検査

7:他疾患との識別が必要な場合には遺伝子検

   

治療薬

 確定した治療法はありませんが、本来は予後良好な病気なので発熱を抑制・短縮させ、QOLを保つための治療が原則となります

1:H2ブロッカー
a)ガスター
最近では多くの医療機関でガスターが使われています。市販のものでも同じ効果があるとされています。
b) タガメット(一般名:シメチジン)
H2ブロッカーに分類される薬で、本来は胃薬として使用されます。タガメットには、Th1へ過剰に傾いた免疫をTh2へ戻すような免疫調節作用があり、PFAPA症候群の約60%に効果があります。15~20mg/kg/日を分2〜3で予防的に投与します。

2:副腎皮質ステロイド(プレドニン) 
発熱発作の初期にプレドニンを0.5~1mg/kgを1回ないし2回投与すると、12~24時間以内に症状は劇的に改善します。プレドニンが良く効くかどうかは、他の自己炎症疾患と区別をするうえで大きな参考になります。

3:非ステロイド性抗炎症薬 
アスピリンやイブプロフェンを使用しますが、副腎皮質ステロイド程の効果はありません。

4:コルヒチン 
家族性地中海熱や痛風に使われる薬ですが、PFAPAに対しても有効性のある症例が見つかっています。

5:扁桃摘出術、アデノイド切除術 
上で述べた薬を使用しても症状が改善しない場合に、外科的に喉の奥にある扁桃腺やアデノイドを切り取ります。患者さんの60%以上に効果がありますが、しばしば再発することもあり「完全な治療法」とはいえません。

6:イラリス

他にも喘息薬「シングレア」「ファモチジン」「オノン」、漢方(小建中湯)、γグロブリンなどが有効だった症例もありますが何が効くかは個人差も大きいようです。また各種抗菌剤、抗生剤は多くの場合効果が認められません。


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